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施設紹介レポート

糖尿病患者さんのどこを診ていますか。

診療の基本は触診と対話

土井内科医院(京都府)

糖尿病を検査だけで
判断してはいないだろうか

 糖尿病の初診で、一般の内科の先生方はどんな診療を行っているだろうか。さまざまな症状の患者さんで混雑する内科外来では、一人の患者さんに費やせる時間は限られる。まず、簡単な問診と検尿、身体測定を行い、血液検査を診て治療計画をたてるというのが一般的な診療スタイルである。
 しかし、京都府で診療を行う土井内科では、医師の診察の前に看護師が時間をかけて問診を実施。受診の動機や現在の自覚症状、職業や生活環境、家族構成などについて細かくヒアリングを行い、カルテに書き込んでいく。
 「糖尿病の治療で大切なのは患者さんを知ることで、患者さんの置かれている環境や心情を無視して療養指導を行っても、患者さんには受け入れてもらえません。病気に対する患者さんの理解度や治療に取り組む姿勢(気持ち)を知り、患者さんが取り組みやすい治療計画をたてることが大切なんです」(土井院長)。
 無理な療養指導は、患者さんの負担にしかならない。初診ではじっくりと時間をかけて患者さんと向き合い、治療の糸口を探ることが大切だという。

糖尿病診療のポイントは
患者観察から症状を読み取る

 糖尿病患者さんの健康状態は、血糖値やHbA1cなどの検査結果を主体に判断してしまいがちであるが、患者さんの症状を把握するためには、見た目で観察することも大切だという。
 「糖尿病が進行すると細胞の中にエネルギーがうまく取り込めなくなるため、髪の毛が薄く細くなったり、皮膚の弾力がなくなってくるんです。初診時に、こうした変化に気づくことは非常に重要で、血糖値やHbA1cの値ばかりに気を取られていると病気の危険信号を見過ごしてしまうこともあるので注意が必要です」(土井院長)。
 例えばHbA1cの値が6%台で皮膚の色やハリが明らかに悪い患者さんと、HbA1cの値が7%台で皮膚の色つやの良い患者さんとでは、前者のほうが症状が重いと判断することが大切。また、糖尿病の疑いがあって受診された患者さんでも、短期間に極度に体重が落ちていたり、重度の歯周病が疑われる場合は、糖尿病がかなり進行している場合もあるため、翌日から通院を義務づけ、速やかに治療にあたることも必要だという。

糖尿病だからこそ見逃してはいけない、
合併症のサイン

 糖尿病の治療で何よりも大切なのは合併症を予防すること。土井内科では、患者さんの症状に合わせて、定期的な検査を行っている。
 「大血管合併症のチェックは頸動脈エコーとCAVIABI検査をします。また、細小血管合併症のチェックは眼底検査と尿検査(尿中アルブミン)を行っていますが、神経障害については、そうした検査が正常でも進行している場合があるため、すべての患者さんに年1回アキレス腱反射と同時に足背動脈の触知を行っています」(土井院長)。
 アキレス腱反射は専用の器具を使えば診察室で簡単に行うことができる。しかし、触診を行うことが少なくなってきている今日では、専門医に委ねてしまっている医師も多く、一般内科ではほとんど行われていないのが現状だ。
 神経障害を放置しておくと糖尿病性足病変が悪化して壊疽になったり、無自覚低血糖や無痛性心筋梗塞などを引き起こし、命にかかわる危険性もある。神経障害は初期段階であれば、血糖コントロールで改善することも十分に可能なので、初診時には触診を必ず行ってほしいと土井院長はいう。